こんにちは、FabLab Bohol (フィリピン)の高木です。早いもので、11月で青年海外協力隊員*1としてFablab Boholに配属となり2年が経ちました。さて今回は、Fablab Boholが取り組んでいる活動を2つ紹介します。
*1青年海外協力隊員 日本政府のODA(政府開発援助)の一環として、 現地の人々と共に働き、彼らと同じ言葉で話し、相互理解を図りながら、彼らの自助努力を促進するように活動する草の根レベルのボランティア 。
ゴミを資源にする「プラスチック再利用事業」
Fablab Boholが行っている事業の一つにプラスチックゴミの再利用があります。
事業背景として州都タグビララン市では、主にレジ袋などの再生が難しいプラスチックゴミが1日あたり10トン廃棄されており、それらは市内の集積場で埋め立てられていて、そこで働く回収業者の健康や周辺の環境に悪影響を与えているという問題を抱えています。その低価格で入手可能なプラスチックゴミを資源として再利用するための施設を市内全15箇所の村役場に設置して産業化し、住民たちのモノづくりによる収入向上と環境美化を目標にしたのがこの事業です。タグビララン市役所、各村役場などと協力しながら行っています。
この事業では、協力機関や地域住民に対して説明会を開くたびに「とても良い事業だ。来てくれてありがとう。」という言葉をもらい、彼らの問題意識の高さを目の当たりにしてきました。プラスチックゴミ問題は近年のインターネットの普及や行政の啓発活動により市内の貧困層の間でも常識となりつつあります。
現在は、各村役場をまわって地域住民への事業説明を行いながら、今年9月に市内1箇所の村役場内に設置したプラスチック再生施設で住民主体の生産活動が行えるよう準備を進めています。初めの1箇所は12月中旬には正式にオープンとなる見込みで、これに続きさらに2箇所の設置を行います。
村役場内に設置したプラスチック再生施設。慶應義塾大学やFablab Kannaiと協力して開発したプラスチック再生機器が3台設置されている。
Fablab Boholで行った機器の組み立て・生産ワークショップの様子
ワークショップ参加者がつくった身分証ケース
日系の現地NGOへのモノづくり支援「ミニチュアトライシクル」
ボホールで障がい者支援活動をしているBABITA HOUSEという日系NGO団体があります。
そこの利用者であるレイモンドさんは知的障がいと視覚障がいを抱えているにもかかわらず、お土産用に精密なミニチュアのトライシクル*2を制作しています。ただ以前は、1つ1つ手作りで1個の制作に約1ヶ月かかっていたため、それで生計を立てることができるほどの生産性を確保できていませんでした。そこで彼が制作したものをスキャンし一番難しく時間のかかる部品カットの工程をレーザーカッターで行い、作業時間の短縮を図りました。また彼以外の利用者も制作に協力できるように、Fablab Boholで生産ワークショップを行い、現在では4人の利用者が作業を分担し、1日あたり2個の制作ができるようになりました。今後も、彼ら自身がレーザーカッターや他のデジタル機器を使いこなし、生活の糧としていけることを目標に継続的な支援を行なっていきます。
*2トライシクル フィリピンで庶民の足として利用されている3輪タクシー。100cc程度の小型オートバイにサイドカーや側車をつけたものなど地域ごとに外見が多様である
レイモンドさんと、彼が木製のマッチ箱で制作したミニチュアトライシクル
Fablab Boholで行った生産ワークショップの様子
レーザーカッターで作ったミニチュアトライシクル群
Fablab Boholは設立から2年半を迎え、ある利用者はボホール近郊の大気汚染を緩和する一環として電動トライシクルを開発していたり、また他の利用者はFablab Boholに来る小規模業者の依頼を受けて生計を立てたりと、多様性が生まれていてボホールのモノづくりのプラットホームとしてようやく住民主体の地域に根付いた活動が行える状態になったと感じています。
まだまだボホールには、Fablab Boholを活用して解決できる問題が沢山あります。今後はさらに住民一人一人と向き合いながら彼らの助けになるような活動に取り組んでいきたいと思っています。