去る10月10〜12日にファブラボ北加賀屋で「第3回ファブラボ日本会議(通称:Fab Camp 2015)」が開催されました。その中で、北加賀屋の運営方法を参加者の皆さんに紹介する機会があり、中でも特徴的な”番頭”制について多くの皆さんに興味を持ってもらいました。
そこで、今回のリレーブログでは”番頭”制とはなんなのか、というところを詳しくお話ししようかと思います。登場人物は現在”番頭”をしている3名。対話をしながら収録しました。新規でラボを立ち上げようと考えている方などの運営方法を検討する際の参考になれば幸いです。
収録日11月6日(金)15:00〜18:00
津田>以下「つ」
吉岡>以下「よ」
白石>以下「し」
し:こないだファブキャンプしましたねー。二日目の夜に北加賀屋を紹介するという場で、特徴的な運営方法として”番頭”制というものを紹介しました。まずは、議事録を参考にあの日話した内容を、ざっくり引用すると…(笑)。
- 北加賀屋における”番頭”とは:
- ファブラボ北加賀屋がオープンラボと定める日に、鍵の管理、利用者入退室管理、会員の名簿作成(会費受け取り)、機材の無料講習会を”ボランティア”で行う人たち。その他にも、できる限りの制作フォローや相談の受付、月一の番頭会議なども行う。
- ”番頭”制のルーツとその変遷:
- 開設当初はなかった仕組み。初めの3ヶ月は共同設立者の3名で行っていたが、死にそうになった。そのことをメンバーの皆さんに話すことで生まれた仕組み。
- ファブラボ北加賀屋が入っているコーポ北加賀屋はシェアオフィスということもあり、誰でも鍵の管理ができるという状況は、あまり歓迎されないことだった。そのなかで、ファブラボの運営について貢献できる人たち(ある程信頼・信用できる人たち)の力を借りて運営を行おうと考えた。
- ボランティアという性質上、情報共有の境界の線引きが非常に難しく、手探りで進化させてきた。初めは鍵の開け閉めが主な仕事となるお手伝い程度だったが、講習会の開催、月一の会議など情報開示を進めていき、現在ではおおよそ20名の番頭がいて、ラボが保持する個人情報以外ほとんどの情報にアクセス可能。多くの人が協力しながらに行える運営方法を模索しつつ、少しづつ進化している。
といった感じです。(笑)
北加賀屋の番頭さんたち FabLab Kitakagaya FB Group pageから
つ:”番頭”という言葉の発端は、「FabFoo Kansai」(2012年に関西におけるファブラボの可能性を検討しはじめた勉強会)発足のきっかけとなったワークショップまで遡ります。その中で、関西各地に分散してラボができて、利用者がある程度のスキルを持っていれば、そのラボ間を移動しながら設計製作ができるといった「ラボ間での設備の相互利用」のアイデアが出ていて、他のラボと行き来するためにこの人はこれだけのスキルを持ってるというのがわかる”通行手形”みたいなのがあったらいいかもしれないという話が出ていました。それ以降、節目節目で日本に古くからある制度の名前を当てはめるようになって。例えばオープンを”ご開帳”と呼ぶとか。(笑)
し:懐かしい。そんな話していましたね。”番頭”はその名残ということね。我々がラボを”ご開帳”したのが2013年4月で、前述のとおり3ヶ月で弱音を吐くわけだけれど、またその3ヶ月後に、”番頭”専用の情報共有Facebookグループが立ち上がっています。確かこれは、「日報を書こう」ということで始まったと記憶しているんだけれど、現在このグループではラボで制作をしている人たちの進捗や、見学にどんな人たちが来たか、また日々の連絡事項を書いている。個人情報もあるのでこれは、非公開のグループになっていますね。(笑)
よ:”番頭”間での機材の使い方の勉強会なんかも開いていますよね。もともとは、無料講習会の講習内容がばらつきが出ないようにというきっかけだったと思います。今年度4月から初めて、毎月一つの機材を対象に”fabble”(http://fabble.cc/fablabkitakagaya)にまとめています。(笑)
番頭講習会の様子 FLK 番頭 Group pageから
し:この勉強会を行うことで、”番頭”それぞれのスキルレベルがしっかりと見えてきましたよね。それまでは、ぼんやりと「これが得意そう。」という印象しか持っていなかったけれど、具体的にここまで頼めそうという線引きができるようになった気がします。一緒にやれる事の幅が広がれば、お互いフォローもしやすいですしね。しかし、大勢で管理している分、責任の所在がはっきりしないままことが進んでしまったりというリスクはあったりしますね。(笑)
つ:内部でのつながりが強くなって、仲良くなったということは非常にいいと思うんだけど、一方で、ある部分では新たに興味を持って関わりたい人たちのハードルにもなるかもしれない。(笑)
よ:私も”番頭”になる1年前は、ラボに来ても知らない人ばかりで、中の人達は知り合い同士のようでとても入りづらかったのですが、1年程通う間に誰がどんな方なのかわかるようになっておもしろくなってきました。なので、”番頭”に入った時に会員になって間もない方がいる際はその日そこにいる人全員を繋いで、どんなことが得意な方なのかを紹介するようにしています。(笑)
つ:見学や説明会、機材講習会に初めて来た人に対してきちんと対応するというのも大事かと思います。なかなか気が回らない時もありますが、初めて来た人が置いていかれないように。(笑)
し:地道な活動だけれど、大事だよね。内輪だけで盛り上がったいるのって、外から見るとちょっと気持ち悪いしね。(笑)
つ:また、一から作っていく状況をつくるという方法もあるかもしれません。設立当初は関西にたくさんラボができるといいなと考えていました。現在、関西にはファブラボではないけれど幾つかファブ施設ができてきていて、その中にはファブラボ北加賀屋でいろいろ経験した上で新たに始めようという人たちの施設もある。それらが立ち上がる状況を新たなメンバーと共有することで生まれるコミュニティとゆるやかにつながる。そんな形で広がっていくこともできそうです。(笑)
し:のれんとわけとはちょっと違うのかな…。あえて言うなら”たけのこモデル”みたいなことですかね?地下でつながり、思いがけない場所に芽吹く。芽吹きすぎると害になりうるかもしれない。(笑)
つ:関西に限らずその状況はあるかもしれなくて、つまり、続けることの大切さと、新しく始めることの大切さがあって、その二つをいかに共存させるか。(笑)
し:昨年の山口で行った竹のスタディーはここにつながるのか。山口情報芸術センター[YCAM]で行われた、展覧会を通じてずっと竹のこと考えていましたよね。竹取歌作ってみたり…。竹から生まれたかぐや姫は月に帰ったけれど、この先ファブラボはどこに向かうんですかねぇ。(笑)
つ:そろそろ晩秋の名月ですかね…(調べたところ、10月25日でした。笑)
とっぴんぱらりのぷう