【from Shibuya】複数のFabLabを運営して

こんにちは、FabLab Shibuya / FabLab Fujisawaの井上です。

今回はタイトルの通り、複数のFabLabを運営するという貴重な経験から感じたことを共有しつつ、Fabマスターとして今後どのように自分たちのFabLabを進めていきたいかについて書いていきたいと思います。

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FabLab Shibuya OpenLabの様子(6/27撮影)

先日「アプライ制」という形でリニューアルしたFabLab Shibuyaは、リニューアル後の最初のユーザーさんを迎えました。後藤征之さんは以前の機材講習会やOpen Labの利用者でしたが、リニューアルを聞きつけて早速プロジェクトを応募してくれました。後藤さんがアプライしてきたプロジェクトは、Raspberry Piを中心とした子供のための自作ノートPCの開発で、直近では今夏のMaker Faire Tokyo 2015への出展を目標に制作されています。先日の第1回目のOpenLabでは、井上・ナリタも交えてMaker Faireへの出品内容を確認したり、その先に見据えるゴールについて話し合ったり、コンセプトを聞いた上で我々からもアイデアを提示するなど、お互いにとって刺激的なOpen Labになりました。後藤さんのノートPCは、制作に必要なデータやレシピだけでなく、アセンブルに伴うノウハウや、パーツ調達の勘所なども交えて”Fabble“にて公開する予定です。今後もFabLab ShibuyaのOpen Labは、後藤さんの様に具体的な目標をもったユーザーと我々スタッフが、より近い距離でプロジェクトを形にしていくものになります。

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後藤さんが開発途中のノートPC(7/3撮影)

一方、今年5月に正式オープンしたFabLab Fujisawaは、湘南T-SITEという複合商業施設内に「曜日限定」で運営しているFabLabです。毎週水曜日を“Fab Wednesday”と銘打って終日FabLabとして運営し、それ以外の曜日は「湘南ラウンジ -Fab Space-」として“作る楽しさ”を多くの人に体験してもらえる場所として運営しています。複合商業施設内のFabLabは世界的に見ても珍しいかと思いますが、FabLab Shibuyaを始めた頃よりもかなり早いスピードでユーザーさんが増えている印象です。すでに毎週の様に通われるユーザーさんも少なくありません。近隣に“ものを作る人が多い”ということもあるかもしれませんが、運営上の目線では特に以下の点が大きいように思います。

  • 商業施設であるが故に、曜日に関わらず年間を通じていつでもアクセス可能であること
    (=水曜日でなくとも作りたい時に来れる)
  • 湘南ラウンジ -Fab Space-のお客様にも対面でFabLab Fujisawaを案内しやすいこと
    (=お客様とコミュニケーションをとるうちに相手の興味などが見えてくる)
  • 開放的な空間がユーザー間のコミュニケーションを促進しやすいこと
    (=程よく賑やかな商業施設なので声を出すことにためらいが無い)
Fab Wednesdayの様子

Fab Wednesdayの様子

竹内啓行さんはFabLab Fujisawaスタート時からのユーザーさんで、デザイナーとしてのバックグラウンドを活かしながらSTEAM教育をテーマに活動されています。竹内さんがFabLab Fujisawaで作った「投石機キット」や「竹とんぼキット」は、湘南ラウンジのPOP UP shopで販売されたり、ご本人が講師を勤めるかたちで子ども向けのワークショップの開催に繋がりました。自分のために作って終わるのではなく、期間限定とはいえ“販売”や“ワークショップの開催”というある種の「ゴール」までご一緒できたことは、Fabマスターとして今後のイメージをかためる大きなきっかけになりました。

ちなみに竹内さんの弟の竹内悠さんも可愛らしいデザイン雑貨を制作しており、ご兄弟揃ってFabLab Fujisawaのユーザーとして頻繁にいらっしゃっています。

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竹内さんのSTEAM ProjectとFab Spaceのコラボワークショップ(6/6撮影)

“自分のために作る”のは、自分が満足できれば充分なので、ある意味では最もハードルの低いものづくりです(※逆に自らそのハードルを極限まで押し上げるからこそ、アーティストは気高く、厳しい職業ともいえます)。その点では、“使う人を考えて作る”のはとても難しい。非言語な制作物を通じて作者と使い手の間に“共有できる何か”を、作者自身が予め気づいている必要があります。さらにその気づきを正しく形に落とし込む必要があります。これらの機微は言葉にしづらく、目にも見えにくいですが、それでもその先に「豊かさ」があることを使い手に伝える必要があります。こうした難しさを意識してなお、“販売”ともなればその評価がごまかしようのない数字となって自分に返ってきます。自分でも書いてておっかないですが、これに耐えられるのが「プロ」なんでしょうね。

FabLabに話を戻すと、もちろんユーザー全員がプロを目指す必要は無いし、そういう人だけを対象としている組織でもありません。ただ、他者への意識がほんの少し加わるだけでも、作るものに対する姿勢は変わります。先の「湘南ラウンジ -Fab Space-」や渋谷の「&Fab」には贈り物を作りに来るお客様が多く、そうした方は決まって贈る相手のことを真剣に考え、悩みながら作っています。何をどのように作っているかも大事ですが、なんだかんだこれだけ豊かな日本という国では“作る姿勢”や“心構え”に目を向けることも等しく重要だと考えます。

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ノートの表紙にお姉さんが書いた飼いネコの絵をUVプリントし、裏表紙には弟さんが書いた飼い犬の絵をレーザー加工しています。お母さんへの誕生日プレゼントのため、二人で考えられたそうです。一冊のノートに姉弟の仲の良さや家庭の雰囲気が感じられる作品です。(&Fabにて制作)

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ご友人のカフェの1周年記念のお祝いに作られたカトラリー置き。蜜蝋クリームを塗り込んでピカピカに仕上げられました。(湘南ラウンジ -Fab Space-にて制作)

我々は、先日6/30に「ヨコハマ創造都市センター」にお披露目したFabLab β Bashamichiも加えて2つのFabLabと1つの準FabLab、そしていくつかのメイカースペースを運営しています。それらに関わるFabマスターとして、ユーザーが“何を・どう”つくるかだけでなく、その“姿勢や心構え”を共有しながら関わっていきたいと考えるようになりました。先の“販売”や“贈り物”の例に限らず、ものづくりの姿勢や心構えは作り手が設定した「ゴール」に左右されます。せっかくこれだけの場所を運営しているのだから、作り手のゴールを本人の想定よりほんの少し高い位置に提案してみたい。ユーザーがそんな「背伸び」を楽しみながらも本気で繰り返していけば、その成果はいつか誰かが喜ぶ価値に繋がるのではないか。最近はそんな風にユーザーと関わりたいと思っています。“数字”であれ“笑顔”であれ、誰かに評価される気構えで真摯に取り組む作り手を応援したいと思います。