01: FPGA-CAFE 第一の巡礼地は、茨城県つくば研究学園都市にあるFPGA-CAFE。つくば駅で田中先生、FabLabメンバーの梅澤さんと合流し、目的地へ。FPGAカフェは、2010年春から運用を始めており、作品をオープンソース(主にCreative Commonsや修正BSDライセンス等)にするという条件の下で各ツールを無償でご利用頂けますという理念のもとに活動をされています。地域コミュニティのハブになる点、オープンソースハードウェアの文化普及とビジネス展開の拠点とする点、ゲストとホストを「分けない」姿勢など、まさにFabLab精神を実践されている状況がありました。ここで整理をしなければいけないのが、何を持ってFabLabと言うのかということになりますね。急激に増えているFabLabコミュニティー内でも議論がされておりますが、細かい話をするとキリがないので「FabLabの精神」を最低限守るための下記のような大枠の条件(審議中)をご紹介します。 01: ファブラボ憲章のもとに活動し、印刷して掲示してあること 02: 週1回以上市民に公開されていること 03: FabLab標準機材(ペーパーカッター、ミリングマシン、レーザーカッター、Polycom)があること 04:データや知識、ノウハウをネットを用いて公開・共有(オープン化)すること 05: Fab Association(世界FabLab運営事務局)に登録を受け、他のFabLabと交流すること この定義は現在、世界の代表者からなるFab Associationで議論しているものであり、まだ決定ではありません。東アジア代表として田中先生が準備委員会に参加されています。引き続き議論が続けられ、正式には今年の夏のFabLab会議(ペルー)で起草される見込みです。 さてこうした観点からもFPGA-CAFEは、FabLabに限りなく近い存在でした。これはもう連携するしかないですね、ということに。(ますます面白くなりそうです)さらにFPGA-CAFEのユニークなところは、ソフトウェアだけでなく内装もDIYとのこと。3年間かけて改修したというのですから、その根気や完成度には驚きです。カフェを併設するために運営されている相部さん(工学博士)自ら美味しいコーヒーを入れるためにスタバの講習会を受講したそうです。相部さんのお人柄もあり、ここに集まる、引き寄せられる?方々も自然とゆるやかなコミュニケーションの中で、居心地の良さとやりたいことをうまく両立させているようです。 右から、梅澤さん、田中先生、相部さん ============================================================================================================= 02 : はんだづけカフェ 左)金本さん 中央左)はんだの数々 中央右)SWITCH SCIENCE 事務所 右)機械に貼られた用途別のシール つづいて秋葉原へ。昨年「21世紀型オルタナティブ・アートスペース」として設立された3331施設内にあるはんだづけカフェ。こちらは、電子工作のための道具や場所をシェアすることができるオープン・スペースです。カフェといいつつ、お茶が用意されているわけではなりません。Arduinoの販売を主にされているSWITCH SCIENCEが運営しており、半分事務所で、半分はんだづけカフェとして開放している空間です。代表の金本さんにお話を伺いました。はんだづけカフェの発想は、海外で知ったツールシェアリングというアイデアに影響を受けたとのこと。みんなで工作できる共有の道具を増やしていくのがツールシェアリングですが、こちらのカフェでは集まった人がスキルや情報を「教え合う」という互助精神が自然発生しているという。すばらしいですね。プロでは当たり前の技や技術の世界が、一般人が使えるようになったときの変化は少しずつはじまっている。運営にしても、はじめから事業計画をガッチリと立てていたのではなく、「つくる」「まなぶ」「共有」というプロセスの中で築き上げてきたものだとおっしゃっていたのがとても印象的でした。「ゲスト」も「ホスト」もなく、「つくる」という文化の中で場、そして環境も自然とつくられていく。これからFabLab鎌倉を運営するということで頭でっかちになっている私にとって大きな学びの瞬間でもありました。こういういい意味で力が抜けた運営の仕方があるのですね。ようやく、このなんとも言えない心地よさの感覚がわかってきました。ものづくり施設の運営というのは、ずばりコミュニティーを育てるという感覚。「我々が商売をしている理由は文化をつくること」という金本さんの言葉に思わずペン先に力が入るのでした。 ============================================================================================================= 03 : ガジェットカフェ 左)吉弘さん、田中先生 中央)ガジェットクリエイター成長プロセス 左)サービスモデル 急ぎ足で秋葉原を後にして、高円寺にあるガジェットカフェへ。こちらもカフェではなく、ものづくりコミュニケーションスペースです。イベントや交流会を中心に運営されておりビジネルモデルもライブスタジオなどの運営モデルを参考にされているというのがなんとも高円寺っぽいですね。こうした発想の応用も学ぶものがあります。ガジェットカフェの公式ページにも掲載されている上記の図なのですが、ガジェットクリエイターと呼ばれるクリエイター紹介のところを一度クリックしてみてください。すると「現代に生きる数少ないJava原人」「小学3年生から電子工作を始めて早35年」「パパトロニクス」とどこでこの人材を発掘してきたのかしら?という方々ばかり。つまり教える事を専門にしている方々というより、むしろ教えたことはないけどつくることが大好きな人たちに積極的に講師の機会を与え、レベルアップの機会をつくり出している。なんといっても、Twitterを駆使してコミュニティー形成をしているのは驚きでした。メジャーではないとしても、コアなファンが必ずいるポイントを押さえることでイベントを成立させる技というのがあるのですね。代表をされている吉弘さんの心をくすぐる絶妙な心のアンテナの感度は、すごいものがあります。その後、高円寺界隈のローカルなお店でこれまた楽しいひと時を過ごさせて頂きました。 筑波、秋葉原、高円寺と巡った一日でしたが、あれよあれよと時間が過ぎてしまい、まだまだお話ししたかったのですがタイムアウト。実際に顔を突き合わせお話を聞くことで見えてくるものがたくさんあるのですね。都内のものづくり施設のネットワーク化によって一体どんなことが可能なのかも、今日してきた対話の中にヒントがある気がしています。とにかく、わからなくても実践しながら考えていけばいい。そうしたことを教えてもらったようです。(youka)