こんにちは、FabLab Shibuya / FabLab Fujisawaの井上です。
今回はFabLab Shibuyaで現在進めている3つのプロジェクトをご紹介します。昨年アプライ制という形で運営方法をリニューアルさせてから、数こそ減りましたが一つ一つが濃密なプロジェクトを進められています。
Mechanism Encyclopedia
昨年からお越しいただいているユーザーの近藤さんと現在進めているのは「Mechanism Encyclopedia」というプロジェクトです。元々某電機メーカーでメカニカルエンジニアとして働かれていた近藤さんは、ビデオデッキなどの家電製品の機構設計をされていました。最近は記憶媒体のメモリー化が進み、製品の中からますます「メカ」の要素が少なくなってきていますが、それらをいじる楽しさや、動いた時の喜びを伝えたいという思いから始まったプロジェクトです。
Mechanism Encyclopedia Teaser from Mechanism Encyclopedia Teaser on Vimeo.
このプロジェクトでは、機構設計のバイブルともなっている書籍「メカニズムの事典」に収録されている機構例などを参照しながら、3Dモデルのオープンソースアーカイブを作る予定です。現在はAutodesk A360上でデータをメンバー間で共有させながら、複数の機構がシームレスにつながるように、実験と並行してモデリングの際の「ルール決め」を行っています。モデリングのルールが決まったら、少しずつメンバーを増やしていきたいとも考えています。ベトナムのNguyen Duc Thang博士のYoutubeチャンネルの様に、動画として機構のシミュレーションがまとめられているのも有益ですが、実際に出力されたモデルを手に取って動かしてみた時の「重さ」や「滑らかさ」といった触覚的な体験は、まだまだメディア化できないリアリティーを伝えてくれます。
CNC切削による茶杓
もう一人のOpenLabユーザーの鈴木さんは、「より現代的な手法と素材で茶杓を作れないか」という思いからFabLab ShibuyaのOpenLabにアプライされました。幾つかの試作を経て、ご自身がFusion360で設計されたモデルからCNC切削で削り出した茶杓の仕上げを行っています。
井上も茶の世界には疎いのですが、「敷居の高さ」を漠然と感じている対象ではありました。鈴木さんによれば茶の世界も一様ではなく、型や伝統を重視する流派もあれば、逆に外部のものや新しいものを積極的に取り入れる流派もあるそうです。この取り組みを通じて、現代的な生活にもフィットした茶道のための茶道具のかたちを探れたらと考えています。このプロジェクトでの成果物は、実際にその茶道具を使った茶会を開くことで第三者を交えていく予定です。
コペルニクテクノロジー研究会
最後に紹介するのが「コペルニクテクノロジー研究会」です。この会は、途上国向けテクノロジーと使用者と支援者の3者をマッチングするNPO「コペルニク」と、「ファブラボ渋谷」が一緒になり、途上国向けテクノロジーの「改良/改善」をテーマに活動することを目的とした、公開参加型プロジェクトです。
コペルニクが途上国の現場で活動を行う際に、その社会課題解決に相応しいテクノロジーが見つからない、またはあったとしても品質やデザイン上の問題から使用に適さない場合があります。そこで、既存のテクノロジーを理解し、その改良/解決策をプロトタイピングします。この研究会で出てきたアイディアは、できる限り現地で実証し、課題の解決を目標にしています。
初回の研究会テーマは「カシューナッツ殻割り器」の改良です。詳細はファブラボ渋谷のプロジェクト紹介のページをぜひご覧下さい。http://www.fablabshibuya.org/archives/4252
このプロジェクトは、国内外の関心を持つ他のファブラボとも共同で進めていきたいと企画しています。現在は、おおたFabも参加しています。モノをつくる場所と人のネットワークが、ひとつの課題を解決する為に効果的に利用されることを期待しています。
12月から月に1度の研究会日を設けており、2月の開催は24日(水)19時より行います。会場は、おおたFabです。http://www.fablabshibuya.org/archives/4341