Fab Lab Asia Foundation 田中浩也 徳島泰
以下の内容は、FAN2(第2回アジアファブラボ会議)のセッション「Fab Labs for Appropriate Technologies Suitable for developing countries(セッションリーダー:Yogesh Kulkarni&徳島泰)と、「What is the next stage of FabLab?」(セッションリーダー:田中浩也&Ted Hung)で話し合われた内容をもとに、まとめたものです。
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これまでFabLabは、国際的なラボ間の連携やデータ交換を行いやすくすることを目的に、共通化されたデジタル工作機械(レーザーカッター、大小のCNCミリングマシン、ペーパーカッター、3Dプリンタ等)とアナログツール(はんだごて、マイクロコントローラー、電子部品、鉄やすりなど)を備えることを推進してきました。これらによって、機能から外装まで、別の言葉でいえば、ネットワーク~ソフトウェア~エレクトロニクス~ハードウェア~メカニクスといった異なる要素を統合できるようになり、”Fab Academy”を受講することが可能な環境となります。
現在の「IoT (Internet of Things)」や「Maker Faire」では、このような環境から生まれる「電子工作と造形デザインの融合」が多数みられるようになっています。
他方、FabLabの精神・目的は、過去も現在も変わらず「(ほぼ)あらゆるものをつくる ~Making Almost Anything」ことにあります。「(ほぼ)あらゆるものをつくる」ために、あるいは、真の意味でローカルな問題解決を行うために、共通(標準)機材だけでは不足と感じれば、さらに新たな機材を、ラボごと独自に追加することは自然な流れです。
新たな機材をラボごとに追加するにあたって、大きく2つの共有できるコンセプトがあります。
ひとつは、ファブラボ内で独自の機械や道具をつくってしまうことです。既製品の機械や道具を購入するだけでなく、目的に応じて、あるいは、地域の材料や素材に合わせて道具や機械を自作する流れは、世界のファブラボ間で「FabLab2.0」と呼ばれて強く推進されているものです。
もうひとつは、購入するか自作するかは別として、「ファブラボの拡張パッケージ」を用途別に整理しようというアクションです。これはアジア会議にて生まれたアイディアであり、世界に対して先駆けてアジアネットワークから発信していけるものです。このファブラボの拡張パッケージのことを「FabLab+」と名付けることになり、FAN2では大きく以下のタイプがあげられました。
- BioFab (津田)
バイオの実験を目的としたファブラボの拡張パッケージであり、試験管や顕微鏡、貯蔵庫などが想定されています。このパッケージだけは国際的にも推進されており、「How to Make Almost Anything」に続く授業「How to Grow Almost Anything」が2015年より開講されます。標準機材の選定も現在進んでいます。
- ReFab (徳島)
リサイクルを目的としたファブラボの拡張パッケージであり、ヒートプレスやフィラメント再生機などが想定されています。ファブラボ・ボホールにて整備が進んでいます。
- MetalFab (竹村)
金属加工を目的としたファブラボの拡張パッケージであり、溶接機や旋盤・ボール盤などが想定されています。ファブラボ浜松やファブラボ北加賀屋で整備が進んでいます。
- FarmFab (including EnergyFab & WaterFab) Yogesh
農業支援を目的としたファブラボの拡張パッケージであり、農機具、発電機、灌漑などが想定されています。インドのヴィジャンアシュラムで長い経験があります。
- MedicalFab (田中)
医療支援を目的としたファブラボの拡張パッケージであり、医療用3Dプリンタ、3Dスキャナ、ヘルスメーターなどが想定されています。
- CraftFab (小野寺、土岐、ほか)
伝統工芸との連携を目的としたファブラボの拡張パッケージであり、素材コレクション、工芸のための各種ツール、湿度を安定させる部屋や棚などが想定されています。ファブラボ仙台で整備が進んでいます。
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将来的には、対外的にラボの特徴を発信し、利用者からよりアクセスしやすくするためにも、「FabLab+ FarmFab」や「FabLab+ MetalFab」のように、拡張パッケージ込みでファブラボがウェブサイト等で発信・告知ができるようになることが好ましい流れです。現段階は、どのような機材が必要かのテストと整理が各ラボごとに進行しています。FAN2では、それぞれのリーダー(先導役)の決定も行われました。今後、アジアネットワークがこの動きを先導していければと考えています。