FabLabの機材を使いこなし、(ほぼ)なんでもつくるスキル(スピリット)を育むための講座FabAcademy。全世界のファブラボをつないで? MITの授業にアクセスする? 日本では、まだまだFabAcademyは知られていない状況は、いなめません。そこで、現在本講座を受講している西原由実さんに、「日本でFab Academyを受けているYumiちゃんだからこそ伝えられる、リアルな体験記を書いてくれることは可能かな?」という相談をしたところ、快く承諾してくれました。長期プログラムなので、2回にわけてYumiちゃんのFab Academy体験記をお届けいたしますね。
Fab Academy 2015 体験記 No.1
Fab Academyはマサチューセッツ工科大学で秋に開講されている講義「How to make (almost) anything」に基づいた約5ヶ月に及ぶ学習プログラムです。生徒はデジタルファブリケーションや電子回路のプロトタイピングを通じて「(ほぼ)なんでもつくる」ためのスキルを身につけます。認定された世界中のファブラボから遠隔で学ぶことができ、今年は53のファブラボから229人の生徒が受講していてる中で、ファブラボ鎌倉からは2名の生徒が参加しています(私がその一人です)。Neil Gershenfeldによるグローバル講義と各ファブラボのインストラクターの指導を受けながら生徒は各週出される課題と最終課題をこなします。最後に全ての課題をやり遂た生徒には修了の認定証がファブラボ国際会議で授与されます。1月末から始まってから残るところ一ヶ月となりましたが、今まで私がこなしてきた課題とともに今年のFab Academyについてレポートしたいと思います。
01: ファブラボ鎌倉から講義を受けている様子
毎週水曜日、日本では23時からビデオ会議(MCU)でFab Academyの講義が英語で行われます。前半の1時間半が先週の課題のレビュー、休憩を挟んだ後半がNeilによる講義です。講義中にも各国のインストラクターからのコメントや生徒からの質問が飛び交います。受講する際に必要な機材、素材はファボラボに揃っていて、教材やチュートリアルは全てFab Academyのサイトで公開され、講義の様子も動画で見ることができます。
生徒は各週出される課題をこなし、そのプロセスを個人のサイトにあげていくため、じっくりアイディア出しに時間をかけることはできません。このプログラムは「何」を作るかより、「どうやって」作るのかを様々な機材やソフトウェアを使いながらハンズオンで学んでいきます。一週間という限られた時間の中でいかに課題をやり遂げられるのか。この講座で培ったスキルをどのように最終課題に反映するのか。プロジェクトマネジメントが大事になります。また、個人のサイトは個人が振り返るための記録となるだけでなく、幅広いスキルを身につけた証のポートフォリオともなります。
FabAcademyを受講する生徒は年齢やバックグラウンドが幅広く(建築家、エンジニア、アーティスト、学生、研究者など)もちろん得意、不得意は人それぞれです。毎週のレビューで発表される生徒の個性的な作品や、高い技術レベルに私はいつも刺激を受けています。
Week 1 principles and practices, project management (Jan 28)
講義前半:デジタルファブリケーションと世界のファブラボについて
講義後半:バージョン管理システム、Web開発、プロジェクトマネジメントについて
課題:自己紹介と最終課題で製作したいものを記した個人のサイトを作成し、クラスのアーカイブにあげる
私が今回のFabAcademyで作りたいものは「くしゃみをするティッシュ箱」です。風邪を引いて鼻水が止まらず、ティッシュ箱をずるずると持ち歩いていた時、日常品に人間味を吹き込めたらいいなと思ったのがきっかけです。人のくしゃみに応じてティッシュを飛ばしたいのですが、どのように実現できるのかまだ詳細は詰めていないところです。また完成した時に詳しく紹介しますね。生徒はMercurialという分散型バージョン管理システムを使って個人のサイトをMITのサーバにあげ、毎週の成果を記録しながらサイトを更新していきます。
Week 2 computer-aided design (Feb 4)
講義前半:各ファブラボと学生の簡単な自己紹介
講義後半:2Dソフト、3Dソフト、シミュレーションソフト、動画・音声編集ソフトについて
課題:最終課題を(描く、レンダリングをする、アニメーションにする、シミュレーションする等で)モデリングし個人のサイトにあげる
講義ではソフトの使い方にまで踏み込まない代わりに、様々なソフトが紹介されます。Neil曰く「なるべく多くのプログラムを試してみてから自分に合うものを探すことが大事」。それに一番応えていたのがAnders Haldinで、ポストイットで計画を立ててから一週間で11個のソフトを試していました(!)。
私はBlenderというアニメーションソフトで最終課題のシミュレーションアニメを作りました。ソフトの操作に慣れるのに時間がかかってしまい一週間があっという間に終わってしまったのですが、風と布のシミュレーションをしたのが初めてです。
Week 3 computer-controlled cutting (Feb 11)
(今回以降、講義の前半は先週のレビューになります。)
講義:ペーパーカッター、レーザーカッターについて
課題:Press-fit construction kitをデザイン・製作し、そのプロセスを記録する
アクリルやMDFより使われず、素材の良さがあまり知られていないことから、今回の課題で使う素材はダンボールに限定されました。素材性を活かした折り曲げと組み立ての工夫をしたPatricio Ortizの美しい作品にNeil大絶賛。(MAKE blogでも生徒の作品が紹介されています。)
私は形を変えたり、パーツを回転させるようにしたかったので、press-fit construction kitに折り紙を掛け合わせました。ペーパーカッターで紙に折り目をつけてからスパイラル状に折り、それをレーザーカッターで切ったパーツに(無理やり)押し通します。
それではこの続きは次回のレポートにて。Week 4からはいよいよ電子回路に入ります!
(田中浩也先生の体験記に「How to make (almost) anything」の講義について詳細に記されているので、気になる方はぜひご一読ください)
by yumi