今日は、鎌倉でスタートアップ・インターンミーティング。正式なインターンとは違い、FabLabKamakura機材の準備と各自の研究の足がかりとして参加を募ったので、今回のインターンはSFC田中浩也研究室のメンバーを中心に構成しています。FabLabJapanからは、多摩美で副手をされている山本さんや、エンジニアの梅澤さんと一緒に作業を進めています。蔵で作業をしていると、本当に人がたくさん迷い込んでくるという面白い状況があります。毎年、GWの時期の鎌倉は人でごったがえすそうです。江の電に乗るのに40分以上も待つというのですから、ディズニーランド並みの混雑ですね。そこで迷い込んでくる方々を見込んで、オープン前のGWの期間に何かプレイベント的なことをやってみようという企画が上がりました。まずは、企画を蔵のオーナーである田中さん(ちなみに、田中先生じゃないです)に相談するため打合せに来て頂きました。
この酒蔵のことをインターンの方々に知ってもらうことも重要だったので、オーナーの田中さんに移築へのいきさつや熱い想い、苦労話、先達の知恵を丁寧に説明して頂きました。実際に蔵の中で話を聞くということが、とても大切なんですね。今の若い人たちの感覚だからこそ、こういう価値のある建物で活動することの意味を潜在的にわかっている、そんな気がしています。本物は、言葉を並べなくとも五感に響いてくるとでも言えばいいでしょうか。
興味深い話がたくさんあったのですが、中でも耐震に対する先達の知恵にとても大切な教えがあるように思えてまりません。現在の建築基準法では、建物を地面と結合させていかに「揺れない」ということが重要視されています。しかし、この120年前の構造は、全く逆の発想で構築されています。構造体となる部材と部材の接合部分には、いわゆる揺れを許す「あそび」に楔(くさび)が打ち込まれ、地震の揺れに対して身を委ねるような仕組みになっています。伝統的な日本建築でよく使われている手法です。実際に、蔵では随所に打ち込まれている楔(くさび)を見ることができます。「揺れに対して壁はもろく崩れても、構造体がしっかりとしていれば、壁などいくらでも作り直すことができる」という発想です。昔の酒蔵は、基礎となる部分に建築物が置いてある状態なので、地盤の揺れを直接受けずに家がズレることで倒壊を免れる方法を使用していました。元にもどす方法は、横方向に移動する曳家(ひきや)という手法です。しかし、こうした構造は今の建築基準法では許可が下りず、再建するために泣く泣く基礎と建物を接合したそうです。この状況は、進歩なのか退化なのか考えてしまいますね。
蔵の構造をお聞きしていて、柔道の世界で使われている「柔よく剛を制す」という言葉が思い浮かびました。かつての日本文化は西洋と違い、自然と戦うのではなく自然といかに調和するかという精神が主流でした。みんなで口を揃えてこの蔵に入ると「どこか懐かしい感じがする」という気持ちを抱くのも、私たちがいつの間にか置き忘れてしまった感覚を、この酒蔵が教えてくれるからなのかもしれません。
まだまだお伝えしたい事をたくさんお話して頂きました。オーナーの田中さんのメッセージを記載しました。→ PLACE
来訪の際に、続きをお話したいと思います。そしてぜひ蔵の細部もご覧ください。(youka)
Update! : 4月23日 スタートアップ・インターンMTG http://bit.ly/fPcEdU